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あまり堅苦しい話は無しにします。
私たちが取り扱っているワインの産地・カナダのケロウナという町に住みながら、仕事や生活にワインが関わってくる中から、何となく感じたことや出来事、その時々のトピックを気軽にお伝えするコーナーです。お仕事の合間や、息抜きの一時に軽い気持ちで読んでいただければ嬉しいです。


暖冬に悩まされるアイスワイン   2004年12月19日
 12月も中旬を過ぎ、クリスマスに向けて1日が過ぎ去る早さを実感しているこのごろです。日本にお住いのアイスワイン愛好家の皆様や、ケロウナへお越し頂きました私達のお客様からの、「アイスワインの収穫はできましたか?」というメールが、日を追うごとに多くなっております。残念ながら今日時点(12月19日)では、まだアイスワインの収穫には至っておりません。11月12月のケロウナへお越し下さる日本のお客様は、例年ですとかなり少ないのですが、今年は夏のシーズンと変わらないほど、たくさんのお客様に来ていただきました。この時期にこんなにも多くのお客様がいらっしゃること自体、驚くと共に大変有り難いことなのです。
 そして当然のごとく、冬のケロウナのワイナリー巡りをするわけですが、ブドウ畑はすでに収穫が終わった後ですから、寒々しい風景が目の前に広がります。あんなに濃い緑色の畑が、すっかり茶色と黒の冷たいコントラストに変わっています。ブドウ畑に残っているのは、収穫を待つアイスワインのブドウだけですが、その収穫さえ、いったいいつできるのか、全く分からない状態です。
 先日、日本から来られたお客様は、大のアイスワイン愛好家でした。アイスワイン独特の深い甘さと香りに魅了されたことはもちろんのこと、その方がアイスワインの魅力に取り憑かれたのは、収穫に至るまでの経緯だそうです。厳しい冬の寒さが必要でありると同時に、近年の地球温暖化に伴う気象条件の変化で、年々アイスワインを作るワイナリーが減ってきているという事情や、それでも諦めずにアイスワイン造りにチャレンジするワイナリーの哲学に魅了されたということでした。
 確かに、ワインに限らず食品や飲料は、機械的に大量生産を可能にすることができます。大量生産することにより、安価で大量な品数を市場に供給できます。私たち現代人はこうしたマニュファクチャリングの恩恵にあずかっていることは事実です。
 製造側は、更に薄利を求めますから、極限まで大量生産を仕掛けます。近代の製品のほとんどは、このような大量生産と薄利多売の市場になっています。
 そのお客様は、そうした現代の薄利多売の市場とはかけ離れた生産方式を採るアイスワインに最初は疑問を持たれたそうです。そんなに美味しいものなら、もっとたくさん作ればいいじゃないか、と。何故、アイスワインが少量生産しか出来ないのか?その理由を知るべく、いてもたっても居られずに冬のケロウナまでお越しくださいました。
 通常、ワイナリーのブドウ畑の中は、関係者以外立入禁止です。ましてや大切なアイスワイン用のブドウがなった畑への立ち入りは論外ですが、私の取引先のワイナリーにお願いして特別にブドウ畑に入れさせてもらいました。薄曇りの空を覆いつくすかのようなムク鳥の大群が押し寄せ、ブドウをことごとく食いちぎっていく光景を見た瞬間、日本から来られた方は泣き出されてしまいました。まるで自分の手足を食いちぎられたかのような、そんな痛みを感じられたのだと思います。我慢して我慢して、そうやってようやくアイスワインは出来上がります。鳥だけじゃありません。鹿や熊もブドウを食べにやってきます。それでも収穫はできません。寒さが足らないのです。まだ収穫が実施される寒さに達しないのです。
 天候はこれからどう変わっていくのか?それは誰も保証できません。このまま暖冬が続いたら、アイスワインになるはずのブドウは腐ってしまいます。近代の生産方式と全く逆の発想で、今でも前時代的な製法にこだわるアイスワイン。その魅力はしっかりとした味の中に見いだせるのです。

 リカーハーバーやまなか屋
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