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あまり堅苦しい話は無しにします。
私たちが取り扱っているワインの産地・カナダのケロウナという町に住みながら、仕事や生活にワインが関わってくる中から、何となく感じたことや出来事、その時々のトピックを気軽にお伝えするコーナーです。お仕事の合間や、息抜きの一時に軽い気持ちで読んでいただければ嬉しいです。


アイスワインがテレビで取り上げられて    2005年2月28日
 2月20日に放送された人気番組で、カナダのアイスワインが大々的に取り上げられました。その直後から、通常ではあり得ない数のご注文が、洪水のように押し寄せてきました。
放送から5日が過ぎ、ようやく私たちもノーマルな状態に戻りましたが、各方面から様々なご意見やご質問を頂き、私も多いに考えることがありました。
瞬間的なアイスワイン・ブームを改めて考えながら、少し長いですが、緊急のレポートを作成致しました。


 ようやく落ち着いてパソコンに向かえることができたのは6日後でした。今回のテレビ放送による影響の大きさは、時間の経過と共に実感できます。通常月の2ヶ月分相当のご注文が2日間の間に集中したこと、メインで使っているKDDIのメールサーバーがダウンしたこと、楽天を含む当店の【わいん@カナダ】のトップページには、2日間で6万ヒットを越えるアクセスがあったこと、受注の処理は2日間の徹夜作業にまで及んだこと等々。当店にとっては全てが記録ずくめでした。

 私は実際の放送を見ていません。しかし、思い出してみれば昨年、この番組の制作担当者らしき方から、アイスワインについて何度か質問や相談を受けたことがありました。テレビ、新聞、ラジオ、雑誌など、日本のメディアがアイスワインを取り上げる場合、たいてい私たち【わいん@カナダ】にコンタクトを取ってこられることが多く、いつの間にか慢性化していため、まさかあのような番組で取り上げられるとは思ってもいませんでした。お客様の数名からは、アイスワインの果糖度に触れていたことや、専用グラスに触れていたことなど、【わいん@カナダ】のサイトの内容や、私が配信するメルマガの話題に酷似していた、というご意見がありました。

 確かに、アイスワインの果糖度に焦点を絞っている日本人は、おそらく私だけだと思いますし、アイスワイン専用グラスについても同様です。テレビ番組が良い意味で、私たち【わいん@カナダ】に注目してくださったことは大変有り難いことだと感謝しております。テレビを見た視聴者が直接、テレビ局へ電話をしたところ、テレビ局からアイスワインが購入できる先として【わいん@カナダ】を教えられた、という方もかなりの数に及んでおりました。テレビ局側が気を遣って下さったのでしょう。これもまた、有り難いことだと思っております。特に、厳冬下で収穫するという等の複数の厳しい条件をクリアしなければアイスワインにならないということを取り上げてくれたことは、大変意義深いことだと思います。過去、アイスワインを取り上げたテレビ番組は、甘さだけが取り立たされ、過酷な条件を有する作業には目を向けてくれない傾向がありました。その結果、アイスワインは単に甘いワインという薄い認識しかなかったのが日本の市場でした。

 日本の市場というのは、先進国の中でも類を見ないほど、アルコールに関して緩やかな市場です。人体に悪影響のある物質を混入していない限り、取り締まりの対象になりません。ここで問題なるのが、アイスワインを名乗った偽物や類似品の横行です。日本では残念ながら、これを取り締まる法整備がなされていません。従って、悪気がある、無いに関わらず、ワインの世界には偽物が多いのは周知の事実です。アイスワインも例外ではなく、年々、そうした類似品が日本で目立つようになりました。つまり、本物でないアイスワインがたくさん売られている訳です。もちろんインターネットでも売られていますし、楽天市場でも売られています。以前、楽天の担当者と話をしたときに、その担当者はずいぶんと驚いていましたが、楽天側でも察知できず、それどころか売っている店自体が、何が偽物で、何が本物かを理解していないと思われる節も多々あります。知らずに売っているのなら、まだ救われますが、これがもし本物のアイスワインじゃないと知っていて売っているとしたら見過ごすことはできないと思うのです。

 アイスワインの偽物をつくるのは簡単です。普通のワインよりちょっとだけ甘いワインに、アイスワインという商品名を付けてしまえばいいのですから。私ならすぐできますよ。明日にでも取引先のワイナリーに行って、甘口デザートワインにアイスワインのラベルを貼って、日本に輸出してしまえばいいのですから。そして、アイスワインを正しく理解してないであろう、日本の多くの酒屋さんに、アイスワインを特別価格で販売します、とやれば、値段だけで右往左往している類の酒屋さんは飛びついてくるでしょう。だいたい、試飲して、それが本物のアイスワインか、そうでないアイスワインか、を判断できるほどアイスワインの試飲経験が豊富な酒屋さんというのは、日本では数えるほどでしょう。大多数の酒屋さんは、アイスワインは皆同じだと思っていますし、アイスワインの本質を理解していませんので、偽物と知らすに安い値段で仕入れて、お手頃価格で販売する、ということになってしまうのです。

 今回のテレビ番組を観た視聴者の多くは、恐らく、アイスワインを造るのは大変なんだ、ということと、大量生産ができないのだ、ということに気が付いたと思うのです。その意味では、今回のテレビ番組の意味するところは、過分に大きかったと思います。一方で、大量生産できれば事情が違ってきます。価格を安くするためには、大量生産、大量販売を仕掛ける必要があります。これに見合う商品ならば可能な訳です。しかし、世の中には大量生産できない品というものもあるのです。残念ながら、平成不況以来、日本の消費者は安さを迎合する風潮が高まってきました。また、売る側にも責任があります。自らのポリシー無しに、値段だけ安くして売る行為が当たり前になってしまいました。企業努力の末に、価格を下げる競争原理が働くことは素晴らしいことです。しかし、安さだけを追い求めた結果、本来の企業努力無しに、偽物でもなんでも安く売れればいい、という姿勢は歓迎されるものではありません。

 私がなぜ、こうしたことをレポートするかと言うと、おそらく今年中に、ほとんどの酒屋さん、デパート、スーパーがアイスワインに手を出し、その大多数はアイスワインに対する知識が無いため、普通の商品を仕入れる感覚で安い仕入値を追い求めるだろうと思います。そうなると、簡単に偽物にひっかかります。すでに引っかかっている酒屋さんもたくさんあります。有名デパートですら売っているのですから。

 アイスワインは、本来、生産数が希少な品です。日本国内に溢れるほど出回ることはありません。消費者の皆様には、くれぐれもご注意をして頂くようにお願いするしかありません。魚沼産のコシヒカリですら、偽ブランドが国内に多数出回っているのですから、アイスワインの偽物が出回っても何ら不思議じゃないのです。

 さすがのカナダ政府も、こうした現状に怒りをあらわにしているようです。BC州オカナガン地方ワイン組合からの情報によると、在日カナダ大使館は、すでに日本で販売されている偽アイスワイン、日本で造られているアイスワインをリストアップしているといいます。カナダという国は、極めて穏やかな国ですから極端なことはしないと思うのですが、しかし、昨今のカナダ政府は外国に対して、極めて強気の外交姿勢をとっています。アメリカのイラク派兵に、カナダは真っ先に反対し、ブッシュ大統領の逆鱗に触れたことは承知の通りです。それ以来、アメリカのカナダに対する数々の政治的な制裁は、日本では報道されていませんが、相当なものが現在でも続いています。しかも、今月、カナダはアメリカが提唱するミサイル防衛構想にまたもや反対姿勢を表明しました。歴史的に見ても、アメリカとカナダが、こんなにも険悪な関係になったことは例がありません。

 カナダという国は、諸外国に対して高圧的な態度を取らない国ですが、いつまでもイエスマンではダメだ、と気が付いたのだと思います。これからは他国に対しても、納得できないことは正面から抗議をすると思います。アメリカに食ってかかる程ですから、日本の偽アイスワインの現状をこのまま放置しているとは思えません。カナダ政府がどういった態度を示すのか? それは私にも分かりませんが、でもはっきり言えることがあるとしたら、今後、日本の市場は「悪貨が良貨を駆逐する」の諺のように、いつの間にか偽物が本物を飲み込んでしまい、カナダで真面目にアイスワインを造っているワイナリーの死活問題にまで発展すると思います。

 そう考えると、日本の市場や消費者の姿勢が、ほんの少しズレるだけで、生産地に及ぼす影響は計り知れないものがあると思います。私たちは、カナダからのワイン輸出業者であり、日本での輸入業者であり、そして日本での販売者ですし、私自身は産地のカナダに永住していますから、日々、ワイン産業の動向を見ています。ワイナリーと一緒になってアイスワインを造っていますし、現状が手に取るように分かります。アイスワインを、一種のブームにして、それに便乗するような商法が出てくることが一番の懸念材料です。少なからず、売る側はアイスワインの正しい知識を持つことと、本物と偽物を見極める目を養う必要が急務であると思います。目先の仕入れ値の安さだけで、いたずらに類似品や偽物を仕入れて、店頭やインターネットで販売するようなことがあっては、ゆくゆく取り返しのつかないことになるかもしれません。



 リカーハーバーやまなか屋
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