| 記録的な豊作 2006年アイスワイン 2006年12月1日 |
| 「今年のカナダは寒くなる」という長期予報の通り、11月に入ると途端に寒さが増してきました。この調子で寒さが続けば、年内の収穫もあり得るかもしれない、という淡い期待を抱くものの、過剰な期待を込めることは禁物である。昨年も比較的早い寒さが到来したものの、アイスワインの収穫には至らず、結果的に暖冬であった。しかも昨年は極度な暖冬と鳥の被害が激しく、オカナガン地方のワイナリーの約70%はアイスワインの収穫ができなかったという最悪の事態を受け入れざるを得なかったのだ。 |
通常、クリスマス前後に収穫ができれば一番ベストだと言われており、近年では2000年産のアイスワインが12月10日に収穫できただけで、その他の年は越年し、1月から2月末にかけての時期の収穫を迎えていた。
「アイスワインの収穫はいつ頃がベストなのか?」という問い合わせを頂くが、早ければ良いというものではない。寒暖の差を繰り返しながら、ブドウにとって過酷な気象条件が長引くほど、ブドウは果実内の水分を減らし、厳しい環境を乗り越えようとして果糖を貯め込もうとする。 |

大雪に見舞われた畑の中で作業を続ける
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| 当然、果糖を多く貯め込んだブドウが氷結することで、甘さの純度が高いアイスワインが生まれるという理屈になる。収穫時期が早すぎると、果糖を貯め込む前に氷結してしまい、果実内の水分が多い状態のブドウを収穫せざるをえなくなり、果糖度の数値が低くなってしまう。事実、2003年産のアイスワインは、オカナガン地方オリバー地区のワイナリーにおいては、11月20日前後に収穫できたものの、水分が多い氷結ブドウとなってしまったために、果糖度の数値が低いアイスワインになってしまったのだ。 |
| 一方、収穫が遅れると、冬眠を控える鳥や鹿の餌食になってしまい、ブドウは彼らに食べ尽くされてしまう。せっかく果糖を多く貯め込んだブドウも、全て彼らの腹に収まってしまい、アイスワインの収穫そのものができなくなってしまうのだ。また、収穫が遅れるということは、暖冬であることが最大の理由となるが、氷結する前に腐ってしまうブドウも出てくるために、結果として出来高も減り、果糖度も下がってしまうリスクもある。したがって、一般的には12月中旬の収穫がベストであると言われ、私自身の経験からも、2000年産のアイスワインの果糖度の高さから、それを強く実感している。 |

記録的な収穫高となったピノブランの氷結ブドウ
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| さて、今年は11月に入り、寒暖の差が厳しく、ブドウはかなり早い時期から厳しい気象条件にさらされてきた。11月24日から当地を襲った激しい寒波は、大量の雪を降らし、気温をぐんぐんと下げていった。まさかと思ったが、27日の早朝5時にワイナリーから電話を受け、朝8時から収穫を決行するという知らせを受けた。妻と二人で身支度を整え、野外に出ると頬を刺すような強い寒さが襲ってきた。 |
| アイスワインの収穫は、真夜中にはじまり、空が薄明るくなる頃には終了するのが普通である。太陽が出てから気温が上昇するまでの間に収穫を終了させなければならないからだ。せっかく収穫した氷結ブドウも、搾る段階でマイナス8度より、たとえ1度でも温かくなってしまうと、アイスワインというブランド名をつけることができないからだ。しかし、今年は朝8時からの収穫だというから、野外は相当に冷え込んでいることが実感できる。 |

アイスワインの収穫は8年目になる作者の私
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事実、朝8時の時点の気温はマイナス12度だった。マイナス15度以下になってしまうと、寒すぎて果糖のエキスも凍ってしまうため、搾っても何も出てこないのだ。収穫時にマイナス12度という気温はベストである。
連日、降り続いた雪に覆われたブドウ畑は、まるでマシュマロの上を歩くようで足裏に心地よい。スキーウエアで全身を覆っているので寒さ対策は万全だが、長時間に及ぶと手先が冷たくなってしまう。やはり時間と体力の勝負を余儀なくされる。アイスワインの収穫自体は毎年経験している私だが、今年ほどブドウの豊作ぶりを目にしたのは初めてだ。選定用のハサミでブドウを蔦から切り落とした瞬間、左手の手の平一杯にずっしりとした重量を感じた。「重い!」 しっかりした果糖のエキスが詰まった氷結ブドウを、繰り返し繰り返し左手の平で受け止めるたびに、大豊作であることを実感する。
ブドウの出来高は見事な大豊作だが、問題は果糖度のレベルである。いくらたくさんのアイスワインが取れたからと言っても、品質が劣ってしまうと、魅力も半減である。収穫して2時間ほど経ったとき、ワイナリーのオーナーが「59%」という数値を教えてれた。収穫時の氷結ブドウの果糖度の値である。59%というのは、相当に高いレベルである。この原液を醸造し、アイスワインになるとアルコールが発生する分、果糖度は下がるが、収穫時に59%ということはアイスワインとして出来上がった時には、48〜53%ほどの果糖度になると思われる。
カナダ産の多くのアイスワインの平均は、39〜42%という果糖度が一般的だ。50%を越える果糖度のアイスワインというのは、なかなかお目にかかれない。今、現状の市場で購入できるアイスワインで、果糖度50%以上のアイスワインは現存しない。
昨年は暖冬のため、収穫できなかった畑から、2年ぶりのアイスワインの収穫ができ、しかも記録的な果糖度の数値を持ったアイスワインが早ければ2007年春にはお目見えすることになる。このアイスワインの果糖度には多いに注目したい。 |